少し前から実施を発表されていたGoToキャンペーン。
このキャンペーンを楽しみにしている人もいるかもしれませんね。
内容が少しずつ明らかになってきましたが、7月16日には突如として「東京は対象外」との発表も出されました。
なんとも内容が曖昧ですし、ここ最近の感染者拡大で、延期希望や反対の声が上がっています。
でも、旅行業従事者はみんなこのキャンペーンを待ち望んでいるんでしょ?賛成なんでしょ?と思うかもしれません。
しかし、それは違うんです。
今回は、旅行業従事者である私が、 GoToキャンペーンってどうなのか、率直な意見を述べてみたいと思います。
※これから述べるのは、あくまで私個人の意見なので、その点はご了承ください。
なぜ、今の時期?
最近、またコロナの感染者数が増えてきました。
それなのに、強行されようとしているGoToキャンペーン。
延期したらよいのでは?という声や、そもそもその予算を医療に回した方がよいのでは?という声も出ていますね。
このGoToキャンペーン、なぜ、今この時期に強行しようとしているのでしょうか?
それはいくつか理由があると思います。
まずは、最初にコロナの感染が拡大し始めた頃、「GoToキャンペーン」という経済対策をやります!と見切り発車で発表しちゃったからですね。
これで、確かに観光業に携わる人の中で希望を持った人もいたと思います。
それで本当は、感染が落ち着いてきた頃に、安全に旅行に行ける象徴として行われるべきキャンペーンだったと思うのです。
しかし、観光業関係者からの圧力でとにかくやらなければいけないことになってしまったのでしょう。
そして、観光業の稼ぎ時はやはり夏休み。
みんなが休みを取って旅行できない時に、このキャンペーンをやっても仕方ないですからね。
7月の4連休にどうしても間に合わせる必要があったのでしょう。
なんで東京は除外なの?
そんな風にとにかく「なんとしてもやらなければいけないこと」になってしまった、GoToキャンペーン。
しかし、世論は感染者がまた増えているのにどうするんだ、延期しろ、などと声が上がってきました。
今更取りやめなんてできない。
そこで、苦肉の策として、一番感染者が多い東京を除外して、なんとか納得してもらおうとしたのでしょう。
しかし、これっておかしくないですか?
本当に感染者が多い地域の人の行き来を辞めさせたいなら、東京以外の近隣地域も同じ扱いにしないと意味がないです。
同じ東京のオフィスで毎日勤務しているのに、たまたま東京から通っている人か、神奈川や埼玉から通っている人かで、今回のキャンペーンの対象者かどうか分かれるのです。
また、このキャンペーン、国民が払っている税金で行われるわけですよね?
なのに、同じように税金を払っている東京都民だけ除外というのは、不公平ではないかと思います。
税金の使い道は本当にこれでいいの?
そして、もう一点考えたい点は、みんなの税金で旅行代金の補助がされるわけですが、このサービスの恩恵を受けられる消費者は、結局旅行できる余裕のある富裕層であるという点です。
今、会社の経営難で生きるためのお金を稼ぐのにも必死な人たちもいるのに、このサービスはそのような人たちを助けてくれることはないのです。
しかも、このサービス現時点では1人何回でも利用できるのです。
何回も旅行できるお金の余裕のある人たちに、私たち国民の税金で補助して、旅行を楽しんでもらうって何か間違っていないでしょうか?
それよりも、本当にお金を必要としている人への支援や、医療へ予算を回すべきだと私は考えます。
旅行業従事者はこれでみんな助かるのか?
「とはいえ、これで旅行業に携わる人たちはこれで助かるでしょ?」という声もあるかもしれません。
「旅行会社が助かるなら、強行しても意味あるのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか?
ちなみに、私は旅行業従事者ですが、このキャンペーンの恩恵はほぼ全くありません。
なぜなら、私が主に従事しているのは海外旅行だからです。
私の会社は、客観的に見ても日本の旅行業の発展にかなり貢献をしてきた所もあると思いますが、それでも救ってはもらえないのです。
全く。
国は、このキャンペーンをやることで、旅行業全体を救う、みたいな感じを出しているように思いますし、ほかの人々も、旅行業者を救うというのをいい口実に、旅行を考えている人も多いでしょう。
しかし、実際に救われるのはごく一部です。
どこの行き先でも、国内旅行の取り扱いがある旅行会社は恩恵を受けるでしょう。
そして、行き先に選ばれる観光地のホテル業、飲食業の人たちも恩恵を受けるでしょう。
しかし、逆を言うと、それ以外の旅行業者や、行き先に選ばれない地域の人たちには恩恵はありません。
GoToキャンペーンだけをやっておけば、全てはうまくいく、というような言い方はしてほしくないのです。
目先のことだけ見た一時的な応急処置はいらない
そして、最後に一番問題だと思う点です。
結局のところ、確かに経済は回さないといけないというのは分かります。
また、人の移動の規制をするよりも、各事業者や各々がしっかりと感染対策をすることの方が重要だということも分かります。
だから、頭ごなしにGoToキャンペーンを否定したいわけではありません。
しかし、国民全員がしっかりその意識を持たないままに、国内旅行奨励という雰囲気のままに人の移動が始まってしまった場合、また感染拡大が広がり、結局困るのは国民全員であり、また旅行業従事者しかりなのです。
今度もし緊急事態宣言のようなことが再度起こり、人の移動が自由にできない状態になれば、それこそ本当に旅行業は終わりだと思います。
なので、国には目先のことだけを考えるのではなく、長期的な視点を持った政策をお願いしたいというのが、旅行業従事者としての率直な意見です。